北海道新聞メディカルガイドの連載
「いきいきゼミナール健康と医療」取材記事を中心に、
気になる健康と医療について、
専門のお医者さんが、わかりやすく解説する情報ページです。
〜お医者さんに聞いた、病気のあれこれ〜
「直腸膣壁弛緩(ちつへきしかん)症」についてのお話を伺いました。
ゲスト/札幌いしやま病院 西尾 昭彦 先生
 直腸膣壁弛緩症についてお聞きしたいのですが。
 

 便秘の原因はいろいろと考えられ、一般的には弛緩性や緊張性など、大腸の動きに起因するタイプが知られていますが、近ごろ、女性の便秘で新しいタイプのものが報告されています。これは、直腸と膣の間の壁に便のたまるポケットができて、そこに便の先端が引っかかるため排便が困難になるもので、直腸膣壁弛緩症による便秘と呼ばれます。日本でこの病気が着目されるようになったのは最近で、医師の間でもほとんど知られておらず、まだまだ見逃されているのが現状です。ポケットのできる原因は、はっきりと特定されていませんが、経験則からは、生まれつき腸と膣の間の壁が薄い人に多いように思われます。もともと腸と膣の間の壁は非常に薄いもので、普通の女性では数ミリしかありません。また、ポケットがあるからといって、必ず便がそこに引っかかるとは限らず、ポケットができても便秘にならない人もたくさんいます。年齢、妊娠、出産経験はポケットの有無とは関係がありません。症状は特徴的で肛(こう)門で便が止まってしまいます。肛門が小さくて、便が出づらいのではないかと思いがちですが、もっと構造的な問題です。患者さんの中には膣の方からポケットを押さなければ排便ができないという状態もみられます。トイレに行っても上手に排便することができずに、肛門の周りを指で押さえながら排便をしているという人はこの病気を疑ってみてもいいでしょう。検査は、指を直腸に入れて折り曲げることで、ポケットの有無はすぐに分かります。私どもの病院では過去3年間で100人ほどの患者さんを治療していますし、現在も常時2〜3人はこの病気で入院している患者さんがいます。それほど頻度の低い病気とはいえませんので、習慣による便秘ではないのではと感じたら一度検査を受けてみるといいでしょう。

 治療はどのようなものになりますか。
 
 治療は原因となるポケットを縫(ぬ)い縮めることです。手術法はいくつかありますが、直腸と膣の間の会陰(えいん)から手術する方法が一般的です。便秘の患者さんは括約(かつやく)筋が緩んでいることが多いのですが、この方法をとることで、括約筋を補強することにもなります。手術時間は20分程度。退院までは10日間〜2週間程度かかります。手術後は約8割が便秘から解消されます。その劇的な効果に驚かれる患者さんが多いようです。残りの2割は、日ごろ下剤を飲み続けていたことで大腸の動きが悪くなっているため、便秘が残ります。半年をめどに、徐々に下剤を減らし、食物繊維を取る排便リハビリが必要です。