北海道新聞メディカルガイドの連載
「いきいきゼミナール健康と医療」取材記事を中心に、
気になる健康と医療について、
専門のお医者さんが、わかりやすく解説する情報ページです。
〜お医者さんに聞いた、病気のあれこれ〜
今回は「尿失禁」についてのお話を伺いました。
ゲスト/元町泌尿器科クリニック 西村 昌宏 先生
 尿失禁とはどのような症状ですか。
 

 尿失禁は自分の意思とは関係なく、尿が漏れる状態を言い、50歳代以降の方に多く見受けられる、生活上非常に不便な症状です。主な症状としては、お腹に急な力がかかると尿が漏れたり、残尿が少しずつ漏れていくものなどです。また、前立腺(せん)肥大という病気が原因で生じる場合などもあり、さまざまな原因が考えられます。

 男性と女性では尿失禁の症状は違うのでしょうか。
 
 男性に多いのは、前立腺肥大に伴う刺激症状です。簡単に言うと、前立腺によって膀胱の出口が圧迫され、膀胱が神経的に過敏になってしまうのです。例えば、尿意を催した時に抑えが利かず、チョロッと出てしまう切迫性尿失禁や、排尿が終わったと思っても、尿の切れが悪く下着を汚してしまう症状がそれに当たります。また、前立腺肥大が進行してくると、残尿が多い状態になり、尿が膀胱(ぼうこう)から溢(あふ)れ、尿を漏らしてしまう溢流(いつりゅう)性尿失禁が生じます。女性は、男性の場合と比べて症状が多少異なります。女性は尿道が約4cmと短く、尿の禁制を保つための外尿道括約筋が男性ほど強くはありません。そのため、膀胱を支えている骨盤底筋群が弱くなり、膀胱が下がりやすくなってきます。こうなると、くしゃみや重いものを持ち上げる時などの腹圧がかかった時に漏らしてしまう場合があります。原因としては加齢や、多産、肥満、骨盤内手術の影響などがありますが、軽症例も含めると、実は健康な女性でも約3分の1の方が尿失禁の経験があると報告されています。
 尿失禁の治療法は。
 
 男性で前立腺肥大が原因の場合、薬物治療が比較的功を奏します。しかし、前立腺肥大によって排尿状態が悪くなっている場合には、前立腺に熱をかけて治療する高温度治療や、お腹を切らずに尿道から前立腺を切除する手術などが必要となる場合もあります。高温度治療は日帰り治療も可能ですが、効果は手術治療には及びません。尿失禁の程度や、前立腺の大きさ、残尿量、排尿状態の悪さによっては、最初から手術治療を施した方が良い場合が少なくありません。一方、女性の腹圧性尿失禁の場合、男性と比べると、薬物治療は決して効果的とは言えません。軽症の場合は、骨盤底筋群を鍛える尿失禁体操が比較的効果を発揮します。それでも効果がない場合や、失禁の程度がひどい場合は手術が必要となります。いろいろな方法がありますが、最近では尿道の中間部を特殊なメッシュ状のテープで支えるTVT手術が考案され良い成績が得られています。実際の手術時間は、20〜30分程度、入院も数日で治療が可能です。